こんにちは!しらたまです。
しらたまとは?
30代の糖尿病内科医です。
普段は3歳のちびたま(息子)を育てながら臨床医として働いています。
私は同年度に
第34回糖尿病専門医試験
第2回糖尿病代謝内分泌領域専門医試験
のダブル受験をし、無事両方とも合格する事ができました。
糖尿病専門医試験の合格の鍵となるのは、「記述問題の対策」です。
今回は2024年に発表されたCGMのコンセンサスステートメントの概要・想定問題を考えていきます。
※本記事は参考文献を元に個人的に作成したものです。利用時は自己責任で必ず参考文献も確認して下さい。
※誤った記載があった場合には内容確認後に修正するのでご連絡下さい。
前置き
CGMの機器は2010年に保険適応となり、現在急速に需要が高まってきています。(保険適応がない方でも自費購入されて、データを外来に持参される方たまにいますよね。)
今までのSMBGではなかった新たな単語や目標値など多くのキーワードがつまっている分野です。特に今回のコンセンサスステートメントは2024年に発表されたため、周辺知識が記述問題・選択問題ともに出題される可能性は高いと思います。
本記事は1度参考文献を読んだ上でのまとめとして使われるのがいいと思います。
想定問題
CGMに関して以下の問いに答えなさい。
穴埋め問題
持続血糖測定器から得られる指標のうち、血糖が目標範囲(通常 (ア)〜(イ)mg/dL)内にある時間の割合をTIR(Time in renge)という。TIRの臨床目標として1型糖尿病や2型糖尿病患者では(ウ)%以上としているが、高齢者などのハイリスクの患者では(エ)のリスクが高いためにTIRを(オ)%以上とする目標が挙げられている。1型糖尿病患者の妊娠時には血糖値目標範囲を(カ)〜(キ)mg/dLに管理することにより新生児アウトカムが有意に改善したと報告されている。
記述問題
AGP(Ambulatory Glucose Profile)のレポートは、CGM データの可視化により血糖変動の全体像を把握するのに有用である。1型糖尿病患者を例に挙げてAGPの解釈方法を順序立てて説明せよ(400字)
模範解答
ア:70 イ:180 ウ:70 エ:重症低血糖 オ:50 カ:63 キ:140
AGPの解釈はステップ1〜4で行う。ステップ1では、データの質とTIRを確認し、装着率が70%以上あることを前提に解析する。ステップ2では低血糖のパターンを特定し、低血糖の頻度や持続時間、時間帯から低血糖を回避するための調整を行う。具体的には基礎インスリンや追加インスリンの減量、糖質インスリン比の減量、インスリン効果値の増量、補正インスリンの中止や減量、低血糖アラートの活用、Automated Insulin Deliveryの導入などを検討する。ステップ3では血糖変動を評価する。四分位範囲や二十位範囲の上下幅に着目する。四分位範囲は治療因子の影響を受けることが多く、二十位範囲は行動生活因子の影響を受けることが多い。幅はいずれも狭い方が望ましく、%CVは36%以下が望ましい。ステップ4では血糖安定性の評価を行う。中央値曲線の上昇や下降のピークの時間経過や勾配に着目し、可能な限りフラットな推移を目指す。患者の食生活や活動状況に合わせて相談しながら治療を進めていくことが望ましい。(395文字)
CGM
CGMの解釈ではTIR,TAR,TBRの考え方が基本。
HbA1cの値が良好でも、TBRの割合が高いためにHbA1cが低下している場合もあり、CGMによって視覚的に分かるようになった。
注意点としては
・CMGの皮下組織中のグルコース濃度は血糖値と比較すると5-10分前の値が表示されている。
・SMBGによる較正は不要となったが、低血糖時や高血糖時の評価には血糖値の測定を併用することが求められる。
血糖変動の評価指標の特徴
SD | グルコース値の標準偏差 |
%CV (=SD/平均グルコース値×100) | グルコース値の変動係数 T1DMではCV<36%が推奨 →SUやインスリン使用のT1,T2DMでは%CV>36%で有意に低血糖が増加した背景 |
MAGE (Mean Amplitude of Glucose Excursions) | 平均グルコース変動幅 (=CGMデータの1SDを超える血糖変動の平均値) 心血管イベントの関連の報告あり 平均グルコース値の影響を受けない利点がある |
MODD (Mean Of Daily Differences) | 日差変動の指標 →同じ時刻に測定したグルコース値の絶対値の平均 |
MARD (Mean Absolute Relative Difference) | 血糖値との相対的な誤差 10-12%程度ある |
GMI* (Glucose Management Indicator) | CGMにより得られた平均センサーグルコース値を利用して算出した推定HbA1c |
*HbA1cと血糖推移が乖離する病態には特に有用。実測HbA1cとGMIは差が生じるが(0.3%以上が51%,0.5%以上の差が28%)、個人内では比較的一定(個人の赤血球寿命の違いや赤血球膜の糖輸送の違いに起因する)。一般的に平均グルコース25mg/dLの増加はGMIの0.6%の増加に相当。 平均センサーグルコース値150mg/dL=GMI6.9%,175mg/dL=7.5%,200mg/dL=8.1%
目標値
・TIRのみでは血糖変動の質を評価する事は困難
・TIR70%,%CV36%の時、平均血糖は150mg/dLに相当
・TIR70%はHbA1c約7%、TIR50%はHbA1c約8%に相当。
・TIRの10%の変化はHbA1c0.6-0.8%に相当。
・TAR181-250mg/dLをレベル1、TAR >250mg/dLをレベル2としている。
・TBR54-69mg/dLをレベル1、TBR<54mg/dLをレベル2
1型,2型糖尿病 | TBR(<54) | TBR(<70) | TIR(70-180) | TAR(<180) | TAR(<250) |
<1%(15分未満) | <4%(1時間未満) | >70% | <25% | <5% | |
高齢,ハイリスク1型,2型糖尿病 | TBR(<54) | TBR(<70) | TIR(70-180) | TAR(<180) | TAR(<250) |
-(起こさない) | <1%(5分未満) | >50%* | <50% | 10% | |
妊娠1型糖尿病 | TBR(<54) | TBR(<63) | TIR(63-140)** | TAR(<140) | TAR(<250) |
<1% | >4% | >70% | <25% | – |
*TIR50%以上はHbA1c8.3%未満に相当し、ADLが保たれて高齢者には低すぎる目標であることに留意
**TIR(63-140mg/dL)は新生児アウトカムが有意に改善した根拠による.(母体への高血糖の暴露が減少したことに起因)
※GDM,2型糖尿病合併妊娠の目標値はまだエビデンス不足。TBRをできるだけ皆無にした上でTIR(63-140)>70%を目指す。
TITR(Time in Tight Renge)
TITR=70-140mg/dLを目標範囲内にした際にこの範囲内である時間の割合
→140mg/dLの根拠として
①食後血糖値140mg/dL以上は食後高血糖と定義されている
②75gOGTT負荷後2時間値140mg/dL以上は耐糖能異常(IGT)と定義されている
TITRを用いた目標値 | TIR | TITR |
GMI6.5%未満 | 100% | 80% |
GMI6.5-7% | 80% | 60%に相当 |
AGP(Ambulatory Glucose Profile)
・5本の線で構成。
・中央値曲線(50%タイル曲線)=日内変動を判別
・その上下に25-75%範囲のIQR(interquartile range,四分位範囲)は濃い色の帯
・その外側に5-95%範囲のIDR(interdeclile range,二十分位範囲)は薄い色の帯
→IQR,IDRで日差変動を判別
AGPの解釈の仕方
①step1:データの質とTIRの確認
・装着期間の70%以上データが取れているか確認。
②step2:低血糖パターンの特定(頻度,持続時間,程度,時間帯)
低血糖を回避するための調整を行う
→基礎インスリンや追加インスリンの減量(種類や投与時間の変更も検討)、SU薬やグリニド薬の中止や減量、糖質インスリン比の変更、インスリン効果値の増量、補正インスリンの中止や減量、低血糖アラートの活用、Automated Insulin Deliveryの導入など
③step3:血糖変動の評価
・IQR:治療因子を反映
・IDR:行動・生活因子を反映している事が多い。
・どちらも幅が狭い事が望ましい
・%CVが36%超えている場合は血糖変動が激しい
④step4:血糖安定性の評価
・中央値曲線を確認する。
・中央値曲線はフラットである事が望ましい
・日差変動が激しい結果として日内変動が安定して見える場合があるので注意する
終わりに
今回のステートメントは日常診療におけるCGMの活用をより効果的にするためにも必須の知識です。試験対策として理解を深めることはもちろん、実臨床での血糖管理の質を向上させる上でも大切だなと感じました。より良い診療と合格の両方を目指していきましょう!
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最後の追い込みは暗記ペンでキーワードを隠してひたすら覚える!青色の方が目の負担がかからないような気がする。
参考文献
糖尿病67(9)369-386,2024
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