【糖尿病専門医試験対策】AKT阻害薬カピバセルチブ使用時の高血糖・糖尿病ケトアシドーシス発現についての注意喚起

専門医




こんにちは!しらたまです。

しらたまとは?

30代の糖尿病内科医です。

普段は3歳のちびたま(息子)を育てながら臨床医として働いています。

私は同年度に

第34回糖尿病専門医試験

第2回糖尿病代謝内分泌領域専門医試験

のダブル受験をし、無事両方とも合格する事ができました。

前置き

今回のAKT阻害薬の注意喚起は2025年4月15日に日本糖尿病学会が発表したものになります。

高血糖発生後の血糖管理に関してまだまだ知見が足りていない分野なので、個人的には記述問題として出題はしにくい範囲だとは思います。ですがキーワードを全く知らずに試験当日を迎えるのは不安が残るので念の為ポイントは押さえておきたいです。

※本記事は参考文献を元に個人的に記載したものです。利用時は自己責任で必ず参考文献も確認して下さい。

病態に関するご質問にはお返事しておりませんのでご了承下さい。

※誤った記載があった場合には内容確認後に修正するので、ご連絡下さい。

概要

カピバセルチブ(商品名:トルカプ)は2024年3月に乳癌に対して国内承認された世界初の経口AKT阻害薬

・AKT1-3全て阻害する事で抗腫瘍効果を発現する。

・副作用として重篤な高血糖が認められている

(CAP Itello-291試験では有害事象として16.9%に高血糖を認めた。)

・日本での市販後調査でも高血糖関連事象が33例報告、その内1例がDKAで死亡

AKT阻害薬による高血糖発生機序

・AKTは細胞の増殖・成長・代謝・血管新生などに関与しているキナーゼ

AKTが阻害されると

 ①肝臓のグリコーゲンの合成が阻害

 ②骨格筋・脂肪組織のグルコースの取り込みが阻害 されて著明な高血糖となる

イメージとしてはインスリン受容体の刺激によりAKTは活性化するので、AKTが阻害されてしまうとインスリンによるシグナルが下流に伝わらずに高血糖となります。

カピバセルチブ適正使用ガイド

投与開始後1ヶ月は2週間毎その後も1ヶ月毎空腹時血糖値を測定

3ヶ月毎HbA1cの測定が推奨

・注意すべき点として投与1日目から高血糖の発現の可能性がある

(高血糖発現の中央値:15日、範囲:1〜367日)

・一部症例でDKAは発生する

・非糖尿病患者でもカピバセルチブ投与後にDKAを発症し大量のインスリン(100単位/時間)投与でも血糖管理不良での死亡例がある

今後の展望

・現在カピバセルチブは乳癌のみの適応

・作用機序からは今後転移性去勢抵抗性前立腺癌など他の悪性腫瘍を対象とした臨床試験も進行している。

終わりに

私はまだ実際の症例として経験したことがありません。

「カピバセルチブ」「トルカプ」と「高血糖」のキーワードはまとめて頭の隅に置いておいておき、早期発見に努めたいです。

参考文献

日本糖尿病学会 AKT阻害薬カピバセルチブ使用時の高血糖・糖尿病ケトアシドーシス発現についての注意喚起

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